卓球は瞬発力のマラソン競技である

1999/1/01

明けましておめでとう。
今年の第一号は、体力面について話を進めよう。
男は毎日、子牛を持ち上げた。子牛は成長し、少しずつ体重が増える。
毎日ずうっと続けているうち、男は知らぬ間に成牛を持ち上げる力持ちになっていた。
これは、西洋の神話である。
同じ事が現在、トレーニングの原則になっている。
毎日それと気付かないほど少しずつ練習(質・量とも)の量を増やし永続させる。
普通の人は、ある日突然、猛烈に練習し、すっかりやったような気になるものだが、
これは利少なく害多しである。
余裕を持って始め、だんだん高めていく以外に道はない。
卓球という競技は瞬発力のマラソン競技である。
世界選手権大会(団体戦)での一日の最多試合を物理的に計算する。
世界選手権大会、団体戦の場合
1日/4試合×3ゲーム=12ゲーム×36 (21:15)×5本のラリー=2,160本(全力スウィング)
2,160本×1.5m(台の巾)=3,240m(ダッシュ)
1日に2,160回の全力スウィング。
1日に3,240mのダッシュ・ストップがいる。
以前の男子団体戦スウェースリング方式での試合数を計算すると、1日/5,400回の全力スウィングと8,100mのダッシュ&ストップが必要であった。しかし各国のレベルアップにより予選リーグから激戦が続き、余りにも体力的に過酷であり、時間も掛かり過ぎるということで、1991年に現在の試合形式に変わった。
ゴルフの場合…. 1日の所要時間は、ハーフラウンド2.5時間×2=5時間
人間がある力を出す時に起こすパワーの伝達システムは、
テークバック、スウィングに入る、インパクト、フォロースルー….1.2秒かかる。
(テニス、野球、卓球….全部同じ位である。)
故にゴルフの場合、1ラウンド/100打としたら、フィジカル的な(歩くのは別)1日の
実動時間=2分しかない。それだけ精神的負荷が大きい競技といえる。
テニスの場合….所要時間=1日/120分
実動時間=1日/ 20分(所要時間の約1/6)
卓球の場合
所要時間=1試合/45分×4試合=180分→ 3時間
実動時間=2,160本×1.2秒(1回のラリーに要する時間)=2,592秒÷60秒=43.2分
人間は誰でも基礎的な素材を持っている。
筋力には速筋・遅筋とがあるが、例えばマラソンの選手は持久力が必要で、遅筋の多い選手の方が良いと言われている。
卓球は速筋が多い方が良い。だから、速筋を鍛える訓練が重要である。
瞬間的にしか使わないパワー。5秒以内のパワーを鍛えなければならない。
もちろん、基礎体力増強のための訓練を怠ってはならないことは言うまでもない。
筋繊維の発育は60日~70日位かかるのである。
体力トレーニングの重要性・意義を考える;
健 康 - スポーツマンにとって(人間)一番大切な健康を得る。
具体的に言うと、心臓を中心とした内臓器官、循環系器官が鍛えられる。
持久力 - 長時間の技術練習に耐え得る持久力が付く。
結局、技術練習を受け入れる体に導いてくれる。
意志力 - 走る時や集中的な科学的トレーニングの時は、苦しい時もある。
(克己心) そういう時には、「一流を目指す為には、この訓練が自分の為に必要なんだ。」
という意志が強化される。
人の見ていないところで、どの位自分を鍛えるかが勝負。
集中力 - 走っている時等、卓球のことや自分の夢や目標について考える集中力も養われる。
体力トレーニングとは、- 目に見えないもの。
木で言えば、根っこ。
どれ位根がはっているかが、どれ位大きくなれる可能性があるかということだ。
見かけは同じ木の大きさに見えても、根がはっている方が強い。
台風が来てもグラグラしない。
トレーニングと言うのは、
“続けること”“苦しみを乗り越えて努力する”位の負荷がなくてはいけないと思う。
トレーニングをやり続けていくと、体に力が付き、速く、大きく、思うように動くようになるのが実感として解ってくる筈だ。
ある高さまで体が鍛えられたとき、不器用だった人でも不思議なほど、いろいろなことがすぐに出来るようになり、急速に技術が伸びて行くもの。
これは、「体が動かなければ技術の限界が伸びない」ということを身をもって知ることができる。
逆に言えば、「体力があってこそ技術が伸びる」
自分の意志で、必要を感じてやるトレーニングなのに限界近くまで心身の力を出し切ると苦しくて苦しくて、「何で俺はこんなことをやっているのだろう。」
と思うほど脱力感を自分自身、何回も味わったことがある。
一流スポーツマンは異口同音に言っている。
トレーニングは、心をも鍛える - 強い精神力、土壇場での気力等。
自主的にやればやる程、心・技・体に良い結果が出ることは間違いない。