二つのライバル

2006/9/01

今年の夏の甲子園は多くの人が涙したのではないだろうか。
実に感動的で歴史に残る名舞台であった。
優勝した早実も準優勝した駒大苫小牧も
実に見事な粘り強さと集中力を見せてくれた。
私はスポーツの素晴らしさはまさに“感動を生む”-
観戦者を巻き込み、熱い思いがその場全体を一体としてしまう点であると思う。
スポーツ選手は体力の限界に挑戦して鍛え抜かれた心・技・体により、
目標に向って挑戦する。
その姿こそが、人々に感動を生み出すのだ。
早実の和泉監督のコメントの中に
「昨秋、駒大苫小牧に負けて以来、相手に強くしてもらった気がする。
本当に強いチームだった。ぼくも毎年、あんなチームが作れるよう努力します。」
という言葉があった。
悔しさという負のエネルギーも実は大きな効果がある。
その屈辱を蓄えておいて、いつか見ていろ・・・と自分を動かす力にしていく。
そのときの悔しさをエネルギーと意識して溜め込んできたのだろう。
駒大苫小牧という、よきライバルに恵まれたからこそ
早実はあそこまで強くなれたのだろうし、
田中投手という素晴らしいライバルがいたからこそ、
斉藤投手の素晴らしさが更に際立ったのだろう。
よきライバルにめぐまれると自分の実力もぐんぐん伸びていく。
「あいつだけには負けたくない」という思いが、自分の壁を乗り越える原動力となるのだ。
そのエネルギーは「自分というライバル」と正面から
向き合った時にも生まれる。
「こうなりたい」という思いがある。
しかし、「なかなかそうなってくれない自分」がいる。
そこで妥協して諦めてしまうことは簡単である。
しかし、なかなかそうなってくれない自分に立ち向かうことで人間は初めて成長出来るのだ。
4連投の斉藤選手は決勝の2日間、
一人で296球をポーカーフェイスで投げぬいた。
彼は、昨夏、西東京大会準決勝で感情の起伏を突かれて打ち込まれ
コールドで負けた。
それ以来、どんなことがあってもポーカーフェイスを決めてきた、という。
「僕が試合でポーカーフェイスなのは、自分の気持ちを表に出すと
投球が乱れるから」
「ほかの選手がほえたりするように、自分のポーカーフェイスにも計り知れない力があります」
彼は、まさに一つの殻を破り、成長した。
自分の弱さを見つめ、そこから逃げなかったからこそ
驚異的な精神力・克己心を身につけることが出来たのだ。
ライバルがいるからこそ、人は強くなれる。
それはまさに“好敵手”と呼べる“対戦相手”であったり、“自分自身”という存在で
あったりする。
「自分に勝つ」ということは、「第二の強敵」に勝ったという意味で
それもまた立派な勝利だと思う。
負けたくない、という思いが出たときこそ、自分自身を見つめ直し
今自分に必要なことは何であるのかをトコトン考え抜いて
実行に移して欲しい。