塩沼亮潤師の訓え(気づきが人生を決める)

2015/6/01

『塩沼亮潤師の訓え』
(気づきが人生を決める)

以前ある会で、吉野金峯山寺千日回峰行を果たした
塩沼亮潤大阿闍梨(仙台市・慈眼寺住職)の講話を聴かせていただいた。
金峯山寺千数百年の歴史の中で、この荒行を行ったのはたった二人だけです。
9年間続ける行の間に、その理由が病気でも怪我でも、たとえ台風が来ても、
途中で挫折すれば、短刀で腹を切るという厳しい掟があるという。

平成3年5月3日より入行、下痢、発熱に襲われ文字通り死出の旅を覚悟した。
「どんなに辛くとも、苦しくとも、岩にしがみついてでも、立派になって帰ってきなさい」
という母の言葉が聞こえてきて、行を全うできたという。吉野の山にはマムシがいる。
毒蛇に咬まれたら万事休すである。3ケ月目頃には血尿が出る程衰弱。
夜中の山中でマムシの存在がどうして判るのかといえば、「自分しか自分を守る者が
いない境地は、全身これ神経となってマムシの存在を自ずと感ずる」と。

また、亮潤師は、この荒行の後「四無行」に挑んだ。
これは、「眠らない、食べない、飲まない、横にならない」である。この行が9日間続く。
特に水を飲まないことが苦行中の苦行で、生命の危険まで伴う。
人間は、体内に水分がないと血中濃度が濃くなり、血液がドロドロになり死に至る。
師は生き抜くために、「小便」を1日2度しか許されないと気づいた━という。

この会合の後、亮潤師の書かれた「人生の歩き方」を購入しサインをいただいた。
非常にやさしく、解りやすく書かれているので、あっという間に拝読した。
その一部を抜粋しよう。

『困難を試練と思う心』
心の中に大きな夢や目標をもって歩んでいれば、必ず困難や試練はおとずれるものですが、それをのりこえなければ大きな夢や目標をかなえることはできません。
困難なことに出会ったとき精神的に追い込まれてしまうと、どんどん心が卑屈になってしまう。
そんなときこそ、心を明るくもち、前向きな考えをもち、困難を試練と思うことです。
その心が次の一歩につながり、やがていつの日か大きな夢や目標をかなえているものです。

『一挙手一投足が人生に反映される』
人それぞれに幸せの価値観は違いますが、
私は、いつどんなときでも「今が一番幸せ」と思うようにしています。
他人から大変だなぁ、つらそうだなぁと思われても、自分が幸せだと思ったら幸せです。
反対に自分は不幸だなぁと思ったら、その瞬間に暗く不幸な日々がはじまります。
すべては心しだい、考え方しだいです。

人には、それぞれに与えられた環境のなかで、なさなければならない役目があります。
それぞれの立場で、またそのときどきに応じて努力しなければならないことがあります。
そのときに一番大切なことは、自分がどう判断し、どのような心構えをもつかということです。
その結果が自分の人生となり、明日の自分につながります。

『その時期にしかできないことがある』
今の自分には、二十代の頃のように、
早く、そして力強く大峯の険しい山々をかけまわる体力はありません。
このように、人間にはそのとき、その時期にしかできないことがあります。
ですから、後悔しないように今できることを精一杯させていただくことが大切なのです。
先輩や師匠からいろいろなことを教わり、訓示をいただきます。
しかし、まだ人生経験も浅く、また、若く我も強かったために、納得がいかず、
一人で悶々と考えることもありました。今思えば納得できなかったのではなく、
いわれたことが自分の思いと違うため心に壁をつくり、
相手を受け入れようとしない心の働きがあったのではないかと思います。

「納得できない、理解できない」と愚痴るのではなく、
自分のなかに一度受け入れて、そこからいろいろと考えさせていただいたり、
自分なりに努力してみたりすることが大切なのではないかと思います。
それが成長への道につながるのではないでしょうか。
すべてを受け入れるから、自分も受け入れられる、心を開くということはとても素晴らしいことです。

『原点回帰のときがきている』
今、私たちはもう一度、とくに戦後から今に至るまでにこの国が何を得て何を失ったのかを
整理する必要があると思います。そして、あらためて原点に返って、日本の精神的な基礎を
しっかりとしたものにしなければならないのではないかと感じています。
時代は変わるものです。
どんなに便利で豊かになっても、私たちの祖先が培ってきた精神文化を低下させることなく、常に一人ひとりが慎む心をもち、時代に対応していかなければなりません。

真剣に生きて努力していれば、神仏が必ず「気づき」を与えて下さいます。
師の荒行は到底我々凡人には為し得るものではありませんが、
人生を歩んでいると、苦しさや挫折は、必ずやってきます。
しかし、その挫折の苦しみから逃げるのではなく、「挫折は成功のための教訓」と思って、
私は、明るく前向きに生きたいと思う。
師の著書「人生の歩き方」「人生生涯小僧のこころ」は、その指南書となっている。