初心に返り、良い種を蒔こう

2001/2/01

私の21世紀初頭の書初めは「初心不可忘」だった。
皆さんに対する年賀状にも、そのように書いた。
初心に戻って1から出直し、基本をしっかり鍛えて、根を大きく張って、
更なる飛躍に備えを固めていこう…という思いを込めたのである。
先日の大相撲初場所の千秋楽。
本割で負けて帰ってきた貴乃花は、控室で柱に向かってテッポウを繰り返した。
そして西の花道に向かう前にも再びテッポウをやった。
こんな横綱の姿は、彼のことをよく知っている私も初めて見る光景だ。
「強くなりたい!!と思っていた頃を思い出したかったから。
自分の持っているものを全部出すしかないと思って。」…と真情を吐露した。
本人は勿論のことだが、相撲協会にとっても
「お互いに力を出し切った死闘で、相撲の素晴らしさを見せてくれた。」
と、協会幹部が非常に喜んでいたと二子山親方から聞いて、私も心から嬉しかった。
本人も「いやぁー、ほっとしています。凄く嬉しいですね。」
と素直な笑顔が久し振りに美しかった。
明治大学卓球部も初心に返って、基本を見つめ直し、21世紀に羽ばたいて行こう。
今の日本経済は非常に難しい時代で、多くの大型企業、銀行、生命保険、建設業、
流通業(長崎屋・そごう)等が倒産している。
その一方で、元気よく成長している会社も数多くある。
そういう会社の殆どは、社員が明るく、前向きに働いている。
そして、そこに共通して見られる現象は、挨拶が元気なことである。
「おはようございます」「ありがとうございます」「失礼します」
たった一言「おはよう」と挨拶を交わし合うだけで、気持ちが晴れやかになり、
コミュニケーションも活発になる。
練習においても全く同じことだ。
練習が好きで好きで堪らないという選手もいるが、大方の選手は練習はきつい、
辛いと思っていると思う。
従って、どうしても気分が湿りがちになりやすい。
そんな気持ちで練習をやっても、決して楽しくはならない。身につかない。
どうせ同じ時間やるなら楽しくやった方がいいに決まっている。
その為には、どうすればいいか。
一番手軽で、しかも間違いなく効果覿面なのは、元気に明るく挨拶を交し合うことだ。
私は会社で社員に会ったら、まず「おはよう!」と挨拶をする。
その社員も「おはようございます!」と返事をしてくれる。
表情もパッと明るくなる。
たった一言に過ぎないが、声を発することによって、気持ちが外側に向かって広がっていく。
選手同志で声を掛け合えば連帯感が生まれてくる。
黙礼だけの挨拶では意味がない。
ちゃんと顔を上げて、相手の目を見て、大きな声を出すことだ。
寝ぼけ顔の選手も、気乗りのしていない選手も「おはよう」「おはようございます」
と声を掛け合うことによって、練習に向けて気分が高まっていくのである。
挨拶なんかどうでもいいじゃないか、と思う人がいるかも知れないが、それは間違いだ。
元気な挨拶こそが充実した一日の効果が期待出来る練習のいいスタートを約束してく
れるものだ。
成果を上げる為には、必死になって種を蒔き、それを育てなければならない。
成果は、その種が芽を出し、花を咲かせ、実を結んだ結果。
種を蒔いたからと言って、それが全て芽を出し、花を咲かせ、実を結ぶとは限らない。
しかし、蒔かない種は決して芽を出すこともなければ実を結ぶこともない。
「蒔かぬ種は生えぬ」ということわざ通り、
小さな成果でも、それを上げる為には種を蒔かねばならぬ。
そして、更なる成果を上げる為には、それに見合う種を更に蒔き続けなければならない。