ゲームズマンシップ

2003/1/01

新年、明けましておめでとう。
昨年の全日本選手権大会は12年ぶりに明治軍団がベスト4を独占し、
しかも外国人帰化選手のいない準決勝も久し振りのことで観客も大いに沸いていた。
松下対木方の決勝戦終了後、私は君達にも聞こえるように応援にかけつけてくれていた
OBの皆さんに「これが全日本なんですよ」と言った。
決勝戦直前に多くの卓球関係者に質問されて、
私は、「他の大会や試合であれば、木方が7:3で有利だと思うが、全日本だから、
五分五分か或いはほんの少し松下が有利ではないか」と応えた。
テレビ解説をした宮崎君も木方有利と言っていたが、彼に私は同じコメントをした。
一年の総決算で日本一を決める全日本選手権には一種独特のものが存在している。
魔物が住んでいる…といっても言い過ぎではないのではないか。
日本一になる選手は、この大会に臨むため、一年中で最も良い心と体と技術を発揮する
ためのコンディションを整える術を知っているのである。
だから、毎年、全日本では物凄いファインプレイ、考えられないような大逆転などが
随所に見られるのである。
そして、日本一になるための困難を受入れ、乗り越えてきた選手に
勝利の女神が微笑むのである…と私は信じている。
来年は、この悔しさをバネに一層の努力を怠らねば、“木方時代”が到来するであろう。
倉島、木方組のダブルス優勝も本当に嬉しかった、心からの賛辞を送りたい。
偉大なゴルファーのジャック・ニクラウスは「技術だけでは勝てない」という。
「いいスイングをして、いい球を打っていれば、必ず一流になれると思っている人がいる。
確かに技術がどんどん進んでいくのは、いいことだ。
だが、それが必ず勝利に結びつくとは私は思わない。」と言っている。
技術の進歩は勝利への大きな要素には違いないが、
本当に勝つためには、それ以上にもっと学ぶことが多い、という意味である。
技術以外の要素にはいろいろあるが、勝負には相手があるのだから、
その対人関係をいかに有利に処理するかも大切なこと。
技術とは自分自身の中で育てる内向的なことだが、
対人関係は外向的なことであり、両輪がそろって、初めて真の強さが発揮できるのである。
競争相手との関係でよく使われる言葉に「ゲームズマンシップ」がある。
対人関係である以上、相手の精神状態から体調までを理解する必要がある。
そして弱点があれば、そこをつき、強い点があれば、受け流す、などというように
試合の流れが読めてくる。
ここで一発いいスマッシュを決めれば、相手の心理は壊滅するだろう、
などとヤマ場が読める。
その時こそ、技術がものをいうのだ。
真のゲームズマンシップとは、相手を理解することから出発する。
全人格的な競争術であり、正々堂々としたものである。
一口にいえば、人間の心の中にもう少し深く踏み込め…ということである。
同じ勝負を争うのなら、相手の心、全人格を知って戦った方がいいに決まっている。
真のゲームズマンシップを理解することで、勝利に結びつけるよう努力しよう。
今年はどうしても青森大学に勝とう。
それが、卓球界の発展につながる。
そして、それは明治大学にしか出来ないことだから。
相手の心に踏み込んで、全人格を理解して、
強い決意で、やると決めよう!!