アテネに学び、大きな夢に挑戦しよう

2004/9/01

今回のインカレは、君達選手にとって、経験したことのない、貴重な体験となったであろう。予選リーグで、関大に不覚をとった後、開き直って気持ちを入れ替えて
思い切ったプレーをすることが、いかに大切なことか、学ぶことができた。
決勝トーナメント1回戦の愛工大、準々決勝の中大(春季リーグ優勝)戦を
強気と執念で乗り切り、準決勝の青森大戦では
勝負に対する執着心をいかんなく発揮して、勝利に結びつけることが出来た。
試合が終わった瞬間、観客席で応援していた4年生部員が感動の余り号泣した。
そして、母校には関係のない多くの観衆の方々が涙ぐんでいる姿を見かけ、
これが、スポーツの醍醐味だと感じた。
決勝の早大戦は気力を使い果たしてしまい、思うような力が発揮できず、
残念な結果となったが、今年の明治のメンバーで青森大に勝てたということは、
ものすごい自信につながったと思う。
(複数の本部役員の談-明治以外の大学では青森大には勝てないでしょう)
試合後、青森大の河野監督は「明治の伝統の力にやられました」と私に語った。
これからは、気力の充実した状態を持続させることができるよう、
もっともっと心と体を鍛え直さなければならない。
さて、今年のアテネオリンピックでも多くのことを学ぶことが出来た。
谷亮子選手 「シドニーより何倍もうれしい。すごい期待を受け、ものすごい集中力、
忍耐力でここまでやってきた。言葉で説明するのは、難しい。
苦しかった。すべての神経を集中して戦った。」
野村忠宏選手 「技術、体力も大事だけど、世界選手権で負けたとき、
精神力が本当に大事だということを知った。」
コーチ曰く、「彼は、大舞台にタイミングを合わせる術(すべ)が心身の中に宿っている。」
阿武教子選手(明大OB) 「4年に一度の大舞台だから、五輪は必ず勝たなければならない。
いつもそうやって、自分を追い詰めてしまった。
今回は過去の敗戦を見つめ、「プラス思考」で「折れない心」で世界と五輪を制した。
体操 日本が一番苦しい時代を一人で支えてきた体操の塚原直也選手(明大OB)は、
「やっと夢が叶ったという感じです」と言っていた。
息をのむような緊張感の中、体操団体総合の金メダルをかけた争いは、
最初の種目の床で、7位と出遅れた日本が、2位まで追い上げて、
最終種目の鉄棒に持ち込まれた。

0.063
📷   1位 ルーマニア

0.062
📷   2位 日本
   3位 アメリカ
1位から3位までこれだけの僅差だった。
一番手米田功選手、二番手鹿島丈博選手が大技を決めて高得点、
最後の冨田洋之選手は、会場内の興奮のるつぼの中、
大技の連続の後、着地をピタリと決めた。
私も体が震えるような緊張感でテレビを観ていた。
ライバルのアメリカ、ルーマニアをはじめ、他国の選手達も最後の逆転劇に感動し、
「ブラボー」の大歓声を送っていたのが印象的だった。
途中から、アナウンサーと解説者が泣きながら、実況中継をしていたのが、
忘れられない出来事だった。
冨田選手は最後の最後の演技をするとき、
「いいイメージだけを持つようにしました。失敗したときのことは考えませんでした。」
「プレッシャーはありました。でもそのプレッシャーをはねのける訓練を
ずっとやってきたんです」
水泳 平泳ぎの北島康介選手は百メートルで優勝したとき、
「超うれしい」と水を叩いてガッツポーズをとったが、200メートルでは、
北島の北島による北島のための決勝だったと言われる位の余裕で二冠に輝いた。
中学生の頃から少しづつ背伸びした目標を定め、それを一つづつクリアしながら、
「有言実行」で現実のものにしてきた。
「頑張ってしまう性格で、仲間思いの彼は、
400メートルメドレーリレーで銅メダルを獲得し、
「自分が取った二つの金メダルと同じ価値がある」と喜びを爆発させた。
そして、君達が選手として、もっとも身近にやる気を起こさせてくれた選手が
水泳の柴田亜衣選手だったと思う。
「自分でもびっくりした。周りは、もっとびっくりしたと思います。」
今季だけで、13秒76も記録を縮め、一気に世界の頂点に立ったのである。
今回の代表選手の中でも、山田沙知子選手の陰で、全く評判にもならず、
私も失礼ながら、彼女の存在すら知らなかった。
昨年の世界選手権では、予選落ち、国内でも山田選手に勝ったことがない、
その山田選手は、「普通に泳げばメダルは確実」と言われていたのに、
「緊張で何も覚えていない」ことで予選落ちした。
監督とのミーティングで柴田選手は、「アテネに出たい」、
「よし、きつい練習をする。選手生命を絶たれるかもしれないが、命を預けろ」
と言われ、彼女も納得して挑戦が始まった。
「その辺のちょっと上等な石くらいに思っていたのが、磨いてみたらダイヤモンドだった」と育てた田中監督も驚くほどの快挙となった。
「体力、気力の限界まで練習を続けていた」と柴田の努力を称える関係者は多い。
女子マラソンの野口みずき選手
高橋尚子より身長では13センチも低い野口だが、ストライドでは2センチ長い。
ピッチ走法全盛の“常識”を超えたストライド走法。
「マラソンに向かないのでは」と言われたが、2002年名古屋の初マラソンで優勝、
原石の輝きを見出した藤田監督と共に一層の筋力トレーニングで負担に耐える体作りに取り組んだ。
「練習はいつも全力。観ているこちらが心配になる」と関係者はいう。
練習中に心拍数を測ると、200まであがっていたこともあった。
「普通は180位になれば脳が限界を察知してそれ以上は走れなくなるのに・・・」と驚く。
常に限界に挑戦して、練習に取り組む真摯な姿勢と厳しい訓練が
天性の体力と精神力にさらに磨きをかけたといわれている。
5月からの3ヶ月、中国やスイスの高地で、アテネ対策に取り組み、特に6月には
中国、昆明の約1ヶ月間の合宿で男子と互角以上の1350キロを走りこみ、
「今までの合宿で一番長く走った」、「走った距離は自分を裏切らない」と信じて、
黙々と走ってきた野口選手は、地道な練習で培われた自信を秘めて、
アテネで夢を実現し、金字塔を打ち立てたのである。
まだまだ書きたい選手のことは沢山あるが、紙面が足りない。
こうしてテレビの映像や本人のコメント、新聞紙上の取材などを通じて知った
これらのことをまとめてみると、
“思いの強さ”
“限界ギリギリまで挑戦する訓練”
“強くなりたいという気持ちが人一倍強い”
“集中力が抜群” 
“大舞台での冷静さ”
“苦しい訓練を続けてきて培った驚異の精神力”
などから得られる感動を全国民に与えてくれた。
そして、特記すべきことは、成功した競技の選手達は、メンタル・タフネス・トレーニングを
重視してきたことである。
夢とは可能性を追いかけることである。
しかし、夢の実現は容易に手に入るものではない。
自分の手で、自分の頭で考え、自分の身体で苦労して勝ち取ってこそ、
真の幸せが得られるのである。
彼ら金メダリスト達が、夢の実現に向けて、必死に努力してきた姿をみて、
「凄いなあ、よくやったな」と通り過ごしてしまうのではなく、
「彼らに出来ることは自分にだって出来る、よし、自分もああいう選手になりたい」
と決心する選手になって欲しい。
現実に韓国の柳承敏が、非常にハードな試合で、
過去1勝6敗と負けている王皓(中国)を破って、金メダリストになったではないか、
日本の選手も「志」を高く、大きく持ち、決心すれば必ずやれる。
強い決意をもって、世界一になる困難を乗り切る覚悟をし、
今迄、低迷していた競技団体も選手も、必死の覚悟で努力してきたことが、
アテネの空で、こんなに素晴らしく輝いたではないか。
長い間、卓球だけが取り残されている現状は残念でならない。
思いは必ず実現する
熱意を持てば天に通じる
“為せば成る”とは真実である
最後まで執念を持とう
“最後は勝つ”と自分を信じよう
今回の秋季リーグは短期決戦だ。強気と執念で思い切ったプレーを期待している。