逆転勝ち/5つの反省とイメージ

これは、荻村伊智郎氏が以前、『日本経済新聞』に書いた記事の抜粋である。

学ぶべき点が多いと思う。

「私は特に逆転勝ちの多い選手だった。世界選手権大会のシングルスだけでもマッチポイントを

相手に握られ、しかも15-20の劣勢からの7点連取逆転が四回ある。

その中で最も印象に残るのは、24回ストックホルム大会でのボグリンチ(ユーゴ)戦で、先に2ゲーム取られ、第3ゲームは15-20から逆転。第4ゲームをとって2-2のタイとはしたものの、

再び第5ゲームで15-20とマッチポイントを奪われた試合である。しかもサービス順は相手に回った。

私をねめつけ、やおらバックハンドサービスの構えに入ろうとしていた。

 このとき私は自分が負けるということは全く考えていなかったが、狙った球がどうもうまく

決まらないという焦燥感は味わっていた。

はっ、と私が我に返ったのは、ちょうどそのとき、三十人ぐらいのカメラマンや記者たちがカメラを

構えて私のコートをとり囲んだからである。

他のコートの試合はすべて中断され、“世界チャンピオン敗れる”の一瞬を見守ろうとしていた。

私は「あぁ、負けるんだ」と、事情がわかった気がした。

「そうか、どうせ負けるなら、荻村らしくやれ」と思った。

荻村らしい試合とは何か、自分でもわからない。

 だが、そう思った瞬間に気がス―ッと落ち着き、会場が急に狭くなり、

自分が急に巨大になった気がした。会場を一つかみでつかめそうな気がしたのである。

そして、私はラリーの中でのスマッシュコースをバッククロス一本にしぼり、7点連取して

逆転した。

うち1点は相手のスマッシュミスに助けられたが、あとの6点は全部スマッシュで、

会場は大いに湧いた。

そして、私は準決勝、決勝へと進むことができた。

逆転勝ちには反省がつきものである。

「そんなに大量に得点できるのになぜリードされたのか」。

反省があるから高い勝率が挙げられるのだが、人間である以上、好不調の波もあり、

苦手もある。あるときは窮地に立つのも止むを得ない。

しかし、そこから脱するから「あいつは強い」という神話も生まれる。

私の経験からみると、逆転勝ちにはいくつかの共通する要点がある。

一つは、悪い状況を素直に認めること。負けを前にして、決まらないショットを

「あれが入ればなあ」とボヤきながら繰り返さないこと。

二つは、気落ちしないこと。気落ちすると凡矢がでて敗勢が決定的になる。

三つは、ムリをしないこと。ムリをすると必ず狙いすぎの致命的なミスが出る。

四つは、的を絞ること。奇手妙手がそう沢山あるわけではない。

五つは、次の1ポイントだけを考えること。相手は5点のリードを考え、

自分は1点だけを考えたとき、両者の雰囲気が一変する。」

今月は

 いよいよリーグ戦だ。

先日、当社のミーティングで、七田眞先生のお話の中にも日本航空学園の選手が、

「巨人になったイメージ」を持って勝利をものにした…という話があったが、

奇しくも荻村氏の言葉にも「荻村らしくやろう」…と思った瞬間に

「会場が急に狭くなり、自分が急に巨大になった気がした。」といっている。

この記事を読み返していて私自身もこの共通点に驚いている。

私の非常に多くの量のメモ帳(参考資料)の中から、偶然、この記事が目にとまったことも

何かの必然性を感じて、「今月の言葉」としたのである。

明るく自信に満ちたイメージを膨らませて、全員が自分の役割を全うして、

春季リーグを勝利しよう。

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