指導者が考えていること partⅡ

僕の大学時代の同期で、クラスメイトの米倉ボクシング・ジム会長の米倉健司氏。

大学卒業後、彼はボクシング界、僕は卓球界とお互いにスポーツの発展のために心血を注いできた。

今でも、夫婦共々深い付き合いをしている、かけがえのない親友である。

彼は、「過酷な減量をして、リングで激しく闘うボクシングだが、今も昔も変らない」・・・という。

『「今の時代、あえてこんな厳しいことをする若者はいないんじゃないか・・・

昔の選手と今の選手じゃ根性も違うでしょう?」とよく聞かれる。

そんな時俺はいつも決まって「全然変らないよ」と答えているんだ。

ボクシングが好きだ・・・という気持ちはちっとも変ってない。

むしろ今のような時代にジムに入門する子の方が、

昔よりボクシングを愛する気持ちが強いんじゃないかと思う。』

だから「今の若い者は・・・」というセリフは言った事がない、と彼は言っている。

「60歳になったら会長を引退しよう」と思っていたが、それは実現していない。

「結局、ボクシング以外に面白いものはないってことかな」

根っからボクシングが好きで、信条は「指導者の情熱と愛は必ず選手に伝わる」・・・だ。

明治大学2年生のとき、日本人初の世界王者となった白井義男を育てた

アルビン・カーン博士の目にとまった。

「ガラスに大きな石を投げると、大きく割れる。

けど、ピストルで撃ち抜くと、鋭く小さな穴が開くだろう。パンチも同じだよ。

ケンジ(健司)、ピストルのように一点を射抜くように打つんだ。そしてフォロースルーを意識しろ」

「練習で手抜きすれば、そっぽを向いてしまう。

反面、一生懸命やっていると、愛情いっぱいに教えてくれた。」

米倉も指導者になると選手にひたすら尽くした。

今まで柴田国明、ガッツ石松,中島成雄、大橋秀行、川島郭志という

5人の世界チャンピオンを育てた。

今練習生は160人、6名のトレーナーと共に指導している。

「指導はマンツーマンが本来の姿だが、それをやるとジムがつぶれてしまう。

でも出来るだけ理想に近づけたい。」

「指導者に引退はない。体が動くうちは続けたい」と言っている。

アテネオリンピックの男子体操チームの監督加納実氏は

「体操は“美しさ”を競うスポーツ。そして、最後は1人。それが体操の本質です。

演技台に立ったら自分しか頼るものはいない。だから私は練習でもあまり口出しせず

自分で考えさせる。そうやって自主性を育てる。」

余計な口出しはせず、選手の自主性を育てるーこれが加納氏の指導方針だが、

全く口を出さないわけではなく、最適のタイミングで的確なアドバイスをする。

その為に練習をつぶさに観察している。

「医師がレントゲンを見て、体の悪い部分を探すのと同じ、現場の練習をよく見て、

選手の個性や精神状態、調子を把握しておく。

常に見ているから何かあった時に言うべきことが言える。」

体操の基礎となる部分は、どんな技でも同じ。それは「つま先と膝を伸ばすこと。」

これを習得してからでないと次の段階に進むべきではないと考えている。

トップレベルの中国や旧ソ連の選手達はそういう指導のもとで鍛えられている・・・という、

「本当はそれが理想、でも日本の選手達にそれをやるのは難しい。

途中で飽きて嫌になってしまう。だから基礎が不十分でも次の技に挑戦させて

モチベーションを高める。そして、またもとの段階に戻って基礎をもう一度やり直す。

フィードバックすることが大切なんです。

そんな練習のすべてが試合につながっているということも常に意識させる。

これが重要なことです。」

そしてさらに彼が大事にしていることは、“選手の技に共感する”こと。

「選手と一心同体にならなくては指導できません。

選手が鉄棒を握り損ねれば、思わず私も体が反応するくらいです。」と言っている。

以上2号にわたって指導者がどのように考えているかを書いてきた。そこで、

“監督の立場として、私をやる気にさせる選手はどのような選手か”を挙げてみる。

①あきらめずに全力で努力している

②負けず嫌いで、考え方が上向きである。

③明るくて元気で積極的である。他人の悪口を言わない。

④人間的にも成長の様子がよくわかる。

⑤人の見ていないところで、黙々と努力していることを他の人から聞かされる。

⑥やる気のなかった選手が、何かのキッカケをつかんで、燃えてくる。

⑦素直で、人の話をよく聞き、研究熱心である。

⑧日誌やメモをしっかりつけている。

⑨教えたことを早くマスターしてくれる。

⑩試合で結果を出してくれる。

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