寝がけの心得(中村天風師の教え)

人間は、余程心が修養されていない限り、床に入るととかく消極的なことを考える自然傾向を持っている。

人間が寝るときは、体を横にする。頭も横になっている。大脳も横になる。

人間の思考作用は脳髄で行われるが、脊髄の上に大脳が安定している状態の思考作用が一番健康的だと言われている。

だから、横になって考える思考作用は良くないのである。

 寝床の中は、肉体と精神の疲れを休める場所、ただそれだけではない。

「疲れたから寝よう」と、軽く考えてはいけない。

もっともっと深い目的…それは「生命の立て直し」である。

昼間クタクタに疲れた体も、夜ぐっすり眠ると自然の作用で疲れも治り、消耗された力も復活するありがたい働きがある。

だから寝床の中というのは、とても神聖なものである。

寝床の中では無念無想、何も考えないのが一番良い。

しかしこれは、修養しなければなかなかできないことである。

もし、ものを考えずにいられなかったら、

考えれば考えるほど楽しく、思えば思うほどうれしいことだけを考えたり思ったりすればいい。

寝つくまでは、心して垢や汚れはつけないように…!

 寝がけに何の用意もなく寝るだけでもいけないのに、いわんや垢に垢をつけるようなことをやって寝たのでは、それは毒薬を飲みながら寝てしまうのと同じことである。

だから寝がけは、どんなことがあろうとも消極的な考えを持ち込まない心がけを

実行に移すことが大切である。

人により、1~2ヶ月かかる人もいるが、やらないよりはやった方がよい。

一生懸命毎晩やっていると、どんなに心配なこと、腹が立つこと、恐ろしいことも、

いつか気にならなくなってしまうようになる。

 もう一つ大事なことは、寝ぎわに鏡を応用することである。

鏡に向かって自分に暗示をかけると、自然とその暗示通りに心がつくり変えられていく

という効果がある。

最初はうそでもいいから、例えば「こんなことは気にならない。気になるもんか。

今までは気になったが、もう気にしない」と暗示をかける。

簡単明瞭なことだけれども、自分でも驚くほど意思の力が強くなってくる。

だがこれは、あまりにも簡単で、あまりにもやさしい方法なので、

この方法の真の価値をわからない人が、世の中には多いのである。

中村 天風 師   略歴

28才  日露戦争で捕らえられ、銃殺寸前、同志の投げた手榴弾で吹き飛ばされ、

     九死に一生を得る。

     万里の長城で狙撃され、飛び降りて重傷。

     さらに爆傷により、両眼に重度の視力障害をうける。

30才  肺結核を患い、死の宣告をうける。

     北里博士(最高権威)に診てもらうも好転せず。

     医学・宗教・哲学・心理学を勉強。

33才  救いの道を求め、アメリカへ渡り、コロンビア大学で医学を学ぶ。

     その後イギリス・フランス・ドイツにて、それぞれ高名な博士に会うが、

     求める答えは得られず。

35才  帰国を決心。途上カイロでヨガの大聖人カリアッパ師とめぐり逢い、

     ヒマラヤ山脈で2年半修行、新天地を拓く。

37才  帰国途上、上海にて第二次革命に参加。

     孫文を助け最高政務顧問として尽力。

     帰国後、銀行の頭取を初め、いくつかの会社を経営、実業界で活躍。

43才  突如感ずるところがあり、それまでの一切の社会的地位、財産を放棄して、

     救世済民のため「統一哲医学会」を創設。

     上野公園や芝公園で辻説法をはじめる。

     ある時、当時の総理大臣、原敬氏に認められ、

     政界・財界の有力者が次々と入会する。

92才  死亡

直接薫陶をうけた者 10万人

その中には皇族方を初め、大臣・事業家・学者・人間国宝(文化勲章)を叙された人、

オリンピック金メダリストから、俳優・小説家・サラリーマンの人々にいたるまで、

実に多様を極める。

東郷平八郎、山本五十六、日立・野村證券・伊藤忠などの社長、松本幸四郎、

大仏次郎、双葉山、ロックフェラー三世、松下幸之助、稲盛和夫氏らが、

その教えを自らの人生や事業経営に活かしている。

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