東京オリンピックを見据えて~ 世界で戦うための心構え

2017/12/01

『東京オリンピックを見据えて~
                       世界で戦うための心構え』

10月22日(日)明治大学のホームカミングデーの20周年特別企画として
「スポーツの明治!~東京オリンピックを見据えて~」という特別シンポジウムが開催されました。

以下、明治大学広報(2017年11月1日発行より)

日本代表の選手・監督として世界を舞台に戦ってきた
明大卓球部の兒玉圭司総監督(1957年経営卒)を筆頭に、
柔道95㎏超級・バルセロナ五輪銀メダリストの小川直也氏(1990年経営卒)、
シドニー五輪野球日本代表の野上修氏(1997年経営卒)の校友3人と、
端艇部の高島美晴選手(政経2)、自転車部の板倉玄京選手(経営4)、
水泳部の溝畑樹蘭選手(政経1)、卓球部の森薗政崇選手(政経4)の学生4人が登壇した。

フリーアナウンサー・丹羽真由実氏(2006年商卒)の司会の下、
世界で戦うための心構えなどが先輩から語られ、
① 「努力は才能に優る。最も大事な素質は努力することができるかどうか。
高い目標に向かって励んでほしい」(兒玉氏)
② 「競技を終えた後の人生の方が長い。その先を考えておくことも大事。
五輪があったからこそ、今の自分がある」(小川氏)
③ 「人と同じことをしても勝てない。自己分析をして、自分の持ち味、
特徴を徹底的に磨き上げることが必要」(野上氏)

など、3氏から熱いメッセージが贈られた。  

シンポジウムはQ&A方式で、内容の濃いメッセージの交換が行われました。
そのシンポジウムでの一部を抜粋し、前略、中略、後略で、まとめました。

まず、丹羽アナウンサーより
Q. アスリートとして様々な経験を積まれてきた、学生時代から現在に至るまでを振り返って、
自己紹介をお願いします。兒玉さんからよろしくお願いします。
A. 私は大学3年のとき、1956年世界卓球選手権大会に日本代表選手として出場しました。
その1950年代の、世界の卓球界は圧倒的に日本が強い時代で、常に日本スポーツ界のトップを切って
大新聞のトップ面を飾っておりました。その時代はテレビはありませんでした。

日本代表に選ばれたのが、大会の4か月前でした。
その時は本当にそれまでの自分とは別人のように意識と意欲が変わりました。
私は指導者がいて教わるという経験がなかったので、自分で考えて自分で行動し、
自分で技術を開発するなどして努力してきました。
私はまず体力を、特に足腰をもっと鍛えなければならないと思って、毎日、朝の4時に起きて
芝浦の海岸を走りました。
当時の真冬は本当に寒くて苦しかったですが、「俺は外国の選手だけには絶対負けないぞ」
とつぶやきながら懸命に走ってました。
その時の努力が、私の人生に大きな影響を与えてくれたと思います。

また卓球界や、明治大学体育会を通して体験したこと、強い思いは必ず叶う、努力は才能に優る、
感動が次の感動を生む、絶対に諦めない執念、努力の量は質に転換する、
熱意は自分を動かし人をも動かす、人間の能力は無限である、等々を学んできたことが、
事業経営の根幹を成して今日まで歩んで参りまして、感謝の気持ちでいっぱいであります。

その後学生4選手が抱負を述べました。

高島選手:卒業までに世界大会でメダルを獲る。まずは、U23世界選手権でメダルを獲る。
オリンピック出場。ボート競技初のオリンピックでのメダル獲得。
森薗選手:東京オリンピックに出場し、将来的に卓球のメジャー化に協力したい。
溝畑選手:来年以降日本代表に入って国際大会の経験を積む。東京オリンピック前年には
世界選手権があるのでその大会では表彰台を狙っていく。
東京オリンピックではメダルを獲得したい。
板倉選手:安定したタイムで走れるようになり、ワールドカップや世界戦などで表彰台に登れる
までに成長する。自転車競技の発展、自転車の面白さを知ってもらう活動をしていきたい。

Q. その熱い思いを踏まえて先輩としてのアドバイスをお願いします。

A. 皆さんの抱負を聞いて非常に力強く感じ、嬉しく思いました。
私は「思いの強さ」というのは物凄い力を持っていると確信しています。
「思い」に込められた強力なエネルギーを是非知って欲しいと思います。
私は選手として監督として50年以上卓球に携わってきて、この「思い」というものには、
恐ろしいほどのパワーが秘められていて、まさに「どういうことを思うか」、その「思い」によって、
その人の人生は決まっていくのだろう…ということを何回も経験し確信を持つようになりました。
そして「プラス思考」で希望に燃えて前へ前へと前進する人が成功します。
プラス思考が成功のカギを握っているとさえ思っています。
自信を持って前向き(プラス)に考える事ができれば、「出来そうもない」という段階から
「出来るに決まっている」という段階まで成長する事ができます。
私は、1960年に明治大学の監督となり、その間10数年、ナショナルチームの監督として選手と共に
世界中を駆け巡りました。
今まで、何百人という選手を育ててきた私の結論は「努力は才能に優る」ということです。
ですから、「あらゆる素質の中で、最も大事な資質は、努力することができるかどうかという素質である」
というのが私の素質に対する持論であり結論です。

次に各選手からの質問に対して

Q. 水泳部 溝畑選手 → 兒玉
世界大会や、優勝が決まるという試合で、選手に対してどんな言葉をかけていますか?

A. そうですね、色々ありますが、丁度、昨年のリオ・オリンピックで、水谷選手、丹羽選手に
送ったメッセージをお話ししましょう。
・ いいプレーをしている時を思い出し、気持ちを落ち着かせよう
・ 意欲を持て、プラスエネルギーが充満する
・ 大事な場面でリラックスしよう。そして集中して思い切れ
・ エッ!と思う戦術で、相手を慌てさせよう
・ リスクを取らないことは、最大のリスクだ
・ 迷ったときは思い切った道を選ぼう
・ 「自分は強い」“自己暗示”はどんどんかけよう
・ どんなことがあっても“もうだめだ”と思うな!まだ「プラスαの力」が残っていると思え!!
・ 勝ったときの“イメージ”を重視しよう
・ 最後は勝った!!
このメッセージを紙に書いて、大会前に送りました。

Q. 端艇部 高島選手 → 兒玉
明治大学体育会の監督として、現在の体育会の学生に思うことはどういうことですか?

A. スポーツというのは学問や音楽、絵画、芸術・芸能活動と同等或いはそれ以上の文化活動であります。
プロの選手は、自分の生活のために努力します。当たり前のことです。
しかし、アマチュアのトップアスリート達は学業や職場での栄進の道を犠牲にしてまで
何のためにやるのでしょうか。
それは、「人間の文化の向上に寄与しているのだ」という使命感があるからやれるのです。

これは私が初めてナショナルチームの監督をやったときに選手と共にディスカッションし、
辿り着いた結論です。
学生の皆さんや一般国民の皆さんが何を求めているのかといえば、それは、「感動」、「感激」です。
体力の限界に挑戦して鍛え抜かれた心・技・体によって目標に向かって挑戦する…
そういう姿を見て人々は感動するのです。

だから体育会の学生が一般学生の機関車となるためには、そのシンボル活動の結果は、
錆びていてはいけない、輝いていなければならない…というのが私の持論です。

Q. 卓球部 森薗選手 → 兒玉
指導者として一番大切なことは何ですか?

A. 選手にどれだけの力を与えられるか、そのために、自分自身の背中(後姿)でリードしていくことです。
体育会の学生は、日本一、世界一になりたいと思って一生懸命努力します。
日本一、世界一になるためには、強い決心が必要です。強い決心とは、やると決めることです。
そしてやると決めたら、如何なる困難でも受け入れて、それを乗り越える決意をしなければならない。
今、ここにいるトップアスリートの君達は、そうした強い決心をしてきたと思う。

日本一になりたいと思ったら、日本一の困難を乗り越える決意が必要。
世界一になりたいと思ったら、世界一の困難を乗り越える決意をしなければならない。

選手は、本当に色々な意味で努力して、勉強して、自分で相手選手の分析もしています。
ですから指導者は、選手以上に勉強して、自分の専門分野だけでなく、
他の競技の指導者と交流をもったりして勉強していくことです。
また長い間指導者としてやっていると、少し弛んでしまう時期もあります。
そのようなときに、選手が一生懸命努力している姿を見て、
自分が逆に指導者として発奮させられることがありました。
選手と一体となってやっていくということが指導者としても大事なのです。

Q. 最後に学生へ向けての応援の一言をお願いします。

A. これまで皆さんは、一般の学生では経験できないような熱意(情熱)をもって、努力をしてきました。
またメンバー皆で築き上げてきたチームワークを通じ、一体感をもって物事に挑戦するという、
たくさんのすばらしいものを味わい、体験してきたと思う。
またそれぞれの競技で、立派な方々との出会いもあり、よりよい人間関係も築き上げてきたと思います。
それらの経験、人脈をこれからも大事にするとともに、そうした体験を活かして、自信と誇りをもって、
これからの人生を歩んでいって頂きたいと心から祈っております。